When one door closes, another (car) door opens | The New Normal #4

September 7, 2020
Inspirations

世界中の人々の生活がコロナ禍で一変し、非日常が日常となってから早数カ月。

自粛の必要性が叫ばれるなかでも創意工夫を凝らして楽しみを見出す人々を取材し、The New Normalでの生き方に迫った。

 コロナウイルス拡大の影響で外国人観光客向けのツアーガイドの仕事を失い、心機一転、オンラインの仕事をしながら車中泊の旅に出た根本耀さん(27歳)。紀伊半島の大海原が広がる和歌山県新宮市の駐車場からインタビューに応じてくれた。

 大胆不敵な彼の行動の裏には、どんな逆境でもプラスに捉え、自分なりの幸福感を追求する彼の確固たる人生論が垣間見えた。

――コロナでどんな影響を受けましたか?

 もともとインバウンドのお客さんを相手に10〜20人くらいのグループツアーのガイドをしてたんですけど、3月前半から10日間のツアーをやっている間に契約先の旅行会社から電話がかかってきて、今後のツアーは全部キャンセルになったと言われました。

――その時の心境は?

 正直なところ、ショックというより仕方ないよねって感じ。そもそもフリーランスなので、そういうリスクは把握している。そこで足掻いたり、感情で負に陥ったりしても何もメリットはないので、逆にこれをプラスに捉えて、何か新しいことをしようと思いました。

――車で旅をしようと思ったのはなぜ?

 仕事がなくなってから転職しようかなと思ったりもしたけど、ここまできたら自分がやりたいことをやろうと思って。僕以前ヨットをやっていて、いつかヨットに住んで、大学の時に留学していたオーストラリアまで行きたいと思ってたんですね。利益とかお金とか、いろいろなしがらみを除外して、やりたいことって何かなと考えたときに、思いついたのがそういうことでした。

 それに向けてまずヨットを買おうと思って、そのためにネットで繋がりを作ったり、Youtuberの人に話してみたりして調べていたら、今実現するには金銭的にもハードルが高いと思った。そのゴールに対して一番近いステップは何かと思った時に、車中泊でヨットが停まっている田舎の方に行ってみようと。

 ヨットに住んでオーストラリアまで行くということは、ヨットが家の代わりになる。自然の荒波を行く中で、限られたものだけを乗せて、水道も電気もない中で生活する。車中泊は陸地だけど、同じように限られたインフラと限られたスペースに住んで、何かが壊れたときは基本的に自分で直さないといけないので、ヨットの前に車で生活してそういう力をつけようと思った。

――今一番楽しい時間は?

 それよく聞かれるんですけど、僕の中で一番というのはない。僕お酒飲まないしタバコもやらないので、生きてて何が楽しいの?って言われたりするけど、僕にとっては今の生活の全てが楽しい。生活の一部を切り取って、他の時間よりもこれが楽しいですっていうのがない。仕事が楽しくなくて、楽しくない部分を補うために趣味を持って、楽しいことと楽しくないことをはっきり分けてる人が多いかもしれないけど、僕は仕事も趣味も同じで自分で選んだ道なので、そういう感覚がないんですよね。

――コロナをきっかけに考え方は変わった?

 全く変わってない。やっぱりな、というか、自分が今までやってきた方向性は間違ってないなと思いました。働き方がリモートになったり、今世間的に推奨されてることって、僕の中ではもともとその方が良いよね、って思ってたところがあって。昭和的な終身雇用みたいな考え方は捨てて、新しい時代に生きる。コロナによって、コンサバな人の考え方を変えるような出来事が来たね、という感じ。

――どんどん新しいことに挑戦しようと思える原動力は?

 単純に、どうやったら幸せになれるのかな、という探究心。経済は下を向いてて、あまり良い流れじゃないけど、それと自分の幸福感はあまり関係のないことだと思うんです。考え方次第でいくらでも変えられると思っているので、考えることさえやめなければ、どんな状況でも幸せになれる。嫌なこともあるけど、仕事がなくなるってことが不幸せかっていうと、僕の中ではそうじゃない。むしろ色々新しいことに挑戦できるチャンスがきた、くらいの気持ちです。