Don’t Stop the Music | The New Normal #1

July 26, 2025
Inspirations

世界中の人々の生活がコロナ禍で一変し、非日常が日常となってから早数カ月。

自粛の必要性が叫ばれるなかでも創意工夫を凝らして楽しみを見出す人々を取材し、The New Normalでの生き方に迫った。

星野源が発表した「うちで踊ろう」に、サンバやスウィングジャズ版があることをご存知だろうか。「曲名を活かし、みんなでわいわい踊れるように」との思いから、わずか1日でサンバ版を制作したという武田裕煕さんは、多岐にわたる音楽ジャンルに精通しているほか、世界大会で優勝経験のある口笛奏者でもある。

そんな武田さんが暮らすのは「フィリピンの伊豆」。首都マニラから2時間ほど離れた、火山と湖と温泉街のある自然豊かな町は、ロックダウン開始から62日が経つという(2020年5月15日現在)。

――最近はどのように毎日を過ごしていますか?

口笛や言語学視点からの英語発音矯正のオンラインレッスンをしながら、合間に演奏動画を制作しています。みんなが家にいて時間があるからこそ、今まで僕が一人でやっていたことに需要が高まってきて、逆に忙しくなった感じですね。

ここは田舎町なので僕のやりたい音楽をやっている人がいなくて、遠隔でコラボしたいとはずっと思っていました。コラボ演奏動画を初めて出したのが1月半ばで、直後に世界中で外出自粛・制限が始まり、僕の動画を見てくれた人から「コラボ演奏をしよう」と連絡をもらうようになりました。最近はちょっと手に負えないくらいの数になっています(笑) 曲を決めて、どちらかが先に録音・録画した演奏に合わせて録音・録画して、だいたい僕の方で編集や音のミキシングをしてからアップロードする、という流れです。

――オンラインでのコラボ演奏の醍醐味を教えてもらえますか?

海外の人と一緒に演奏しようと思うと、どっちかが移動しなきゃいけない。そう思っていたけど、実は録音に録音を重ねるだけでも、音楽として成立する。この人と演奏できるなんて思わなかっただろうな、という人と一緒に演奏できることが醍醐味かもしれません。コラボした人の9割は、実際に会ったことがない人で、ベネズエラ人が多いです。

僕は10年前からベネズエラ音楽をやっていて、Instagramでもベネズエラ人のフォロワーが多いです。15年の経済危機の影響もあって、アメリカ、チリ、ドイツ、フランス、世界中に散らばっているベネズエラ人が祖国を懐かしんで、外国人が演奏した祖国の音楽の動画を見て応援してくれます。でもフィリピンでベネズエラ音楽をやってる人は全然いないので、1人でやるのも演奏できる楽器に限界があって。ギターの人、歌の人、フルートの人…色んな人とコラボをしています。

――最近の生活のなかで、一番楽しい時間は?

最近、英語の発音矯正レッスンがどんどん楽しくなっています。生徒さんが増えていて、この単語にこうつまづくから、こうすれば直せるという発見がどんどんできるし、次の指導に活かすことができて、生徒さんの発音もぐんぐん向上しています。在宅の人が増えたこのタイミングでと思ってSNSで生徒さんを募集したら結構反応があったので、この数ヶ月をどうやって時間過ごすかが、これが終わったあとの世界でどう生きていくかに直結していくって思っている人は、僕以外にもいるんだろうなあと思いました。この数カ月間、Netflixを観て過ごすのか、それとも自分のスキル獲得のために過ごすのか。

自分は音楽活動をポートフォリオにまとめたり、動画撮影・編集の力をつけたりしたい。英語レッスンにも本腰を入れて、教材も作り始めています。

今、みんながエンターテイメントや明るい話題を求めている中で、自分に提供できることがあるなら、積極的にやっていこうと思います。